第6回成安造形大学卒業制作展
seian 2002 in 大津 特集
第6回卒業制作展 大津パルコ会場風景
社会との葛藤
造形美術科教授
本郷重彦[ text = HONGO Shigehiko ]
「これなに?」「なんでここにあるの?」「なにするの?」 作品を観た人達のこれら疑問の言葉、制作した学生諸君は、たじたじで即答出来ず、ただうろたえているだけ。美術館ではあり得ない風景を、三井寺の山内でよく目にする。
自分の作っている作品って、一体何なの? この素朴な疑問。自分と作品との新たな対話。社会にさらされた作品は、作者を無視して一人歩きを始める。
卒業制作は決して4年間の集大成とは限らない。むしろ、これからが始まりのような情景を生み出している。力作であればあるほど、そのリアクションは大きい。同時に、その作品を通して、自分が何を表現したかったか、なぜこの作品を作ったかが鮮明に脳裏に映し出される。
卒業を目前にして、社会の入り口でのこの体験は、社会の荒波のしぶきをあびただけの小さな洗礼かもしれないが、頑張ってうち勝ち、胸を張って飛び立とう。
第6回卒業制作展 優秀賞・奨励賞
■デザイン科
写真クラス
葛西美幸
優秀賞 葛西美幸 「ing 00−01」 歴史博物館企画展示室
奨励賞 杉沢栄梨 [noise] 歴史博物館企画展示室
奨励賞 李垠庚 「JAPAN IS BLUE」 歴史博物館企画展示室
印刷クラス(イラスト)
渡辺恵子
優秀賞 渡辺恵子 「もんじゃもじゃの森」 市民文化会館多目的ホール
奨励賞 東原稔 「輝的存在」 三井寺金堂
奨励賞 中川賀史 「you」 歴史博物館企画展示室
印刷クラス(グラフィック)
池田みゆき
優秀賞 池田みゆき 「私的五十音 −存在する文字−」 市民文化会館多目的ホール
奨励賞 岡澤理奈 「Theatre Street(テアトルストリート)」 市民文化会館多目的ホール
奨励賞 精山茜 「ナプキン−Which is your favorite−」 市民文化会館多目的ホール
映像クラス(ビデオ)
石井紫
優秀賞 石井紫 「ながいながい夜」 大津パルコ
奨励賞 福地亮・松田直樹・山崎真 「[夢+ゆめ]二乗 [6月1日ver.2]」 大津パルコ
奨励賞 川瀬貴詠・佐伯朋子 「KaSa 詰め合わせパック」 大津パルコ
映像クラス(CG)
田部井勝彦
優秀賞 田部井勝彦 「想起」 伝統芸能会館
奨励賞 手嶋聡 「見知らぬ町へ」 大津パルコ
奨励賞 松田明 「身・外・闘・機」 伝統芸能会館
住環境デザインクラス
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高橋祥剛 山本偉津子
優秀賞 高橋祥剛「Ground Line−scale on the table」 三井寺観音堂客殿
優秀賞 山本偉津子 「Border」 三井寺観音堂客殿
奨励賞 小林あかね 「葦 Works」 三井寺参道
奨励賞 加藤千夏 「巣」 三井寺観音堂客殿
奨励賞 大槻友美 「水の回廊 −水生植物公園みずの森再考−」 三井寺観音堂客殿
奨励賞 中島貴志 「憂し橋(つなぐ)」 三井寺観音堂客殿
■造形美術科
日本画クラス
池田夏子
優秀賞 池田夏子 「踞木の地」 三井寺宗務本所
奨励賞 箭木康一郎 「陽光を刻む」 三井寺宝寿院
奨励賞 小林美穂 「呼吸」 三井寺宗務本所
洋画クラス
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冨倉崇嗣 森谷藍子
優秀賞 冨倉崇嗣 「PARK」 歴史博物館企画展示室
優秀賞 森谷藍子 「たれあし」 歴史博物館企画展示室
奨励賞 梅村尚平 「まそほ」 歴史博物館企画展示室
奨励賞 川井隆司 「Neutral」 歴史博物館企画展示室
奨励賞 山口ゆう子 「記憶」 歴史博物館企画展示室
ファイバーアートクラス
今川由紀子
優秀賞 今川由紀子 「あるもの」 三井寺参道
奨励賞 藤田結子 「転 化」 歴史博物館企画展示室
奨励賞 坪山彩子 「膨らむ」 三井寺参道
立体造形クラス
浅野怜子
優秀賞 浅野怜子 「日 日 日 日 日 日 日 」 三井寺参道
奨励賞 浜島恵美 「ぺロリん 甘い生活」 三井寺参道
奨励賞 村山祐介 「out」 三井寺参道
芸術計画クラス
塩谷昇三
優秀賞 塩谷昇三 「甲斐庄 楠音 論 -女形画家の興起-」 伝統芸能会館
奨励賞 小谷美恵 「京都市立小学校所蔵品に観る近代京都の市民と芸術」 伝統芸能会館
奨励賞 須藤紘子 「宮崎駿の自然観 −水の揺らめきの中に−」 伝統芸能会館
卒業制作展レポート
人間学講座専任講師
島先京一 [ text = SHIMASAKI Kyoichi ]
今年度の卒業制作展は、歴史博物館、市民文化会館、伝統芸能会館、園城寺(三井寺)、大津パルコの、5会場で開催された。会期中は幸いなことに、天候にも恵まれ、出品者にとっても観照者にとっても、充実した時間をすごすことができたように思う。
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歴史博物館
卒業制作展全5会場の中で、作品を展示する空間としては最もニュートラルな性格をもつ、歴史博物館企画展示室には、印刷、写真、洋画の各クラスの作品を中心に、そこにファイバー・アート、立体造形の両クラスの作品が織り込まれるような形で、作品展示が行われた。
歴博会場に展示された印刷クラス(グラフィック、イラスト)の作品は、その形式上の多彩さが目についた。印刷という技術を媒介としたデザインという営為は、生活のありとあらゆるものに関わるものであるから、展示作品が多彩な展開を見せるのは当然のことではあるが、出品者にとっては展示を行う上で苦労があったものと思われる。
壁にかけられた作品や展示台の上に陳列された作品、或いはコンピューターやテレビモニターによる作品の間を縫うように歩きながら感じたのは、印刷物のデザインという領域においては、デザイナーの戦略的な企画性がきわめて重要であるということである。多彩な展示空間の中で観照者に足を止めてもらい、少しでも長く作品を楽しんでもらうためには、やはりそれなりの仕掛けや工夫が必要であろう。その意味では、パッケージと言葉を結び付けようとした少路圭子の作品や、簡単な問題とイラストからなる動物の絵本を一つの集合体として見せた石塚あかりの作品が目を惹いた。
やや詰め込みすぎた感のある印刷クラスに対して、写真クラスの展示は、比較的余裕をもって行われていたように思われる。純粋な平面造形としての写真の可能性を追求するものから、社会的な問題に取り組むものまで、様々な作品が展示されているが、優秀賞の葛西美幸の作品は、棺桶とそこに入れたいものに関するアンケートを切り口に、生と死の問題を考えようとした、意欲作である。葛西はこのテーマに2年がかりで取り組んでおり、今回の展示においては、1年前のものと今年のものを並べることによって、人の死に対する意識の変化を見せようとしている。今後の継続的な展開が望まれる。また、アンケートの対象を同世代だけではなく、様々な年齢層の人びとに拡げることで、さらなる作品の深まりを追求してほしい。
今年度の洋画クラスの展示においてまず特筆すべきは、タブローの作品が多数を占めたことであろう。表現メディアの可能性が多様化している中であえて純粋な平面造形としての絵画にこだわることは、意義深いことに思われる。作品は、明快な具象絵画から抽象絵画、そして半立体的なものまで様々であるが、具象とも抽象とも云いきれない作品に、重要な問題提起があった。優秀賞の2作品ともこのカテゴリーに含めることができると考えられるが、子供に対するイメージを柔らかい色調の中に抒情的に浮かび上がらせた森谷藍子にしても、鮮烈なコバルトブルーの画面に性質の異なる形象を理知的に展開した冨倉崇嗣にしても、明確に視覚化され言語化される寸前の認識を表現の対象としているように思われる。そこには今後の絵画表現の可能性の一つがあるように思われるのである。
なお、何点かの作品は、企画展示室以外のスペースに展示されたが、その成果はさておき、意欲的な試みであったように思う。
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市民文化会館
市民文化会館の多目的ホールは、通常は宴会場として用いられる場所であり、展示には技術的な苦労があったようである。ここでは各作品はブース形式の空間に置かれ、作品を中心とした半ば閉じられた空間群が形成された。そのような空間特性を生かした、観客参加型の作品も少なくなかった。
イラストコース優秀賞の渡辺恵子の絵本を中心とした展示も、そのような観客参加型の試みであったように思われる。渡辺は会場内に居間のような空間を作り、そこで観照者に恰も家でくつろいでいるかのように絵本や原画、そしてキャラクター人形を楽しんでもらうことを企図している。そこには、彼女の創り出したキャラクターの可愛らしさとは裏腹の、したたかな戦略的企画性が窺える。グラフィックコース優秀賞の池田みゆきは、詩とインスタレーション写真を組み合わせた書物によって、五十音の一つひとつに対して独自のイメージを浮かび上がらせることを狙っている。
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伝統芸能会館
伝統芸能会館は例年通り、観客参加型のインスタレーション作品と芸術計画クラスの研究を要約したパネルが展示の中心を占めた。ロビーや舞台、客席、さらにはトイレまでをも作品展開の場所として活用する学生諸君のエネルギーには驚かされるが、それを受け止めてくださった伝統芸能会館関係者各位に感謝の意を表したい。
CGコース優秀賞の田部井勝彦は、鏡の間、橋掛り、後座、そして舞台を用いた、大掛かりなインスタレーションを制作した。観照者は、鏡の間から伸びる通路をゆっくりと歩くことによって、様々な台詞を耳にし、その時限りの不思議な物語空間への同化を体験する。能舞台を活用したこのインスタレーション、作者の田部井にとっても、観照者にとっても、貴重な経験であったに違いない。
芸術計画クラス優秀賞を受賞した塩谷昇三は、大正から昭和にかけて制作活動を展開した異色の日本画家、甲斐庄楠音(かいのしょうただおと)に照明を当てた、綿密な研究の成果を披露した。塩谷は単に楠音の仕事の展開を追うだけではなく、新しい視点をも提案している。さらに研究を深めていくことを切望する。
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園城寺参道
園城寺の参道には、ファイバー・アートと立体造形の両クラスの作品が主に展開された。今回の参道や野外における作品展示において考えさせられたのは、風景の中での色彩の問題である。幾つかの作品は、風景と同化することを明らかに拒否するかのような色彩を用いていたが、それらに対して不快感を抱いた人が間違いなくいたであろうことは、看過し得ない問題を提起する。園城寺の境内は、そこを訪れる人にとって日本の文化の原風景の一つであるということを、私たちは再び考えるべきではないか。
この観点からも、ファイバー・アートクラス優秀賞の今川由紀子の作品は、問題を投げかける。今川は、一切経蔵手前の階段の側面に明るい色のフェルトを貼ることで、風景の改変を試みている。慎重に色彩が選択されていることは理解できるが、石の階段に人工的な色彩が施されている光景がショッキングであることは否定できない。
立体造形クラス優秀賞の浅野怜子は、異なる方法論による風景の改変を実現した。浅野は砂によって40メートルにも及ぶ土台を作り、そこに松葉をほぼ1センチメートル間隔で植え付ける。視覚的にもデリケートな彼女の仕事は、風景に対して優しくありながら、確固たる意志をも感じさせる力強さを併せ持っている。環境に同化しながらも存在感を示すことが可能であることの、よい例であるといえよう。
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園城寺宝寿院、宗務本所
宝寿院と宗務本所は例年通り、日本画クラスの作品が展示の中心を占めた。本年度の日本画クラスは、殆どの出品者が屏風形式を採用したため、どちらの会場においても非常に無理のない作品空間が実現されたといえよう。
優秀賞の池田夏子は、彼女がこれまで描いてきた幾つかの古木を組み合わせ、重厚な画面を作り上げた。そこには池田の自然に対する敬意と、自己の内面を見つめ続ける探究心が込められている。
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園城寺観音堂客殿
観音堂客殿は今年も、住環境デザイン群の力作によって9日間限りの住環境デザインミュージアムと化した。作品の形式は例年以上に多様であり、モデルとパネルを中心とした建築や環境の提案から、家具をはじめとするプロダクト製品の実際、客殿の一室や廊下を用いたインスタレーション、ドローイングによる平面作品等が、せめぎ合うように展示された。
優秀賞受賞者の一人、高橋祥剛は、天板の上を都市空間に見立てることでスケールのトランスポーテーションを起こすようなデスクを提案している。このデスクによって人は、身体レベルのスケールから、身体をはるかに超え身体を包み込むようなスケールまでを体験することになる。同じく優秀賞受賞者、山本偉津子の作品は、諫早湾干拓地近くに立てられる、記念館の設計案である。そこには、人間が自然に対して為してきたことに対する批判という社会的な観点と、住環境を造形していく事に関する内的な視点が、重合的に交差している。
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大津パルコ
映像クラスビデオコースの作品は、大津パルコ店内、スペース4にビデオライブラリーが設営され上映された。作品の内容は、ストーリー性の高いものから、視覚的な関心に重点を置いたもの、抽象的な内容を映像化しようとしたものなど、多彩であった。また、コンピューターによるインタラクティブな作品も展示された。
優秀賞の石井紫(ゆかり)の作品は、昔の恋人の住所を訪ねた女性とそこの現在の住人である男性との、奇妙な同居生活を淡々とした語り口で切り取った、ある種の映像ポエムである。女性が恋人の死を受け入れられるまでが、モノクロの映像で綴られている。
各関連イベント
「今貂子+倚羅座の舞踏公演を共同企画して」
印刷クラス4年
藤田里奈[ text = FUJITA Rina ]
ファイバーアートクラス4年
谷本史織[ text = TANIMOTO Shiori ]
私達は、卒業制作展出品作品として今貂子+倚羅座の舞踏公演を共同企画しました。公演会場である伝統芸能会館に隣接する三井寺に祀られている、「鬼子母神」を公演のテーマに取り上げました。欲望の極限から浄化へと転生した鬼子母神の伝説は、「人間とは何者か」という疑問を投げ掛けてきます。これが機会となり、人間の身体の中で複雑に混ざり合っている相反するものの存在を確信しました。
今回の公演におきまして大勢の皆様にご指導、ご賛同して頂き、心より感謝しています。これを社会へ出る一歩とし、将来の活動へと繋げていきたいと思っております。
(衣装:谷本史織 制作・宣伝美術:藤田里奈)
卒業研究企画講演会
「変わりゆくヒロイン」
2002年2月17日(日)14:00〜
芸術計画クラス4年
横山朋子[ text = YOKOYAMA Tomoko ]
卒業研究企画である公開講演会「変わりゆくヒロイン」は、私の卒業論文である「ヒロインの軌跡:宝塚歌劇団の作品にみる女性観の変化」をもとに企画されたものです。「現代の日本における女性観の変化」をテーマとし、宝塚歌劇団と少女マンガという二つのジャンルから、作品のなかにでてくるヒロインにスポットをあて、現代の女性の在り方を探りました。講師には、宝塚歌劇団について学術書をお書きになった川崎賢子氏と、少女マンガについて積極的に論じておられる藤本由香里氏をお招きしました。当日、お二人には、それぞれの視点から女性観について、興味深いお話をしていただくことができました。今回の講演会は、講師のお二人はもとより、歴史博物館の学芸員の方々、学生スタッフなど、多くの皆様のご協力のおかげで無事終了いたしました。この場をかりて、心より感謝いたします。ありがとうございました。
芸術計画クラス口頭発表
2002年2月24日(日)10:00〜16:00
芸術計画クラス4年
塩谷昇三[ text = SHIOTANI Syozo ]
芸術計画クラスは2月24日(日)、大津歴史博物館講堂にて口頭発表を行なった。例年、芸術計画クラスは研究論文要旨の展示と研究内容の口頭発表という形態で卒展に参加してきたが、今年は口頭発表に先駆けて、研究者の方々を招いての講演会企画も盛況のうちに終了することができた。そして研究生を含めた17人の発表者は限られた少ない時間のなか、大学生活で感得した成果を凝縮し、締め括りに相応しい発表をすることができたと私は思う。発表の工夫の一つに、多岐にわたる個々の研究テーマをジャンル分けし、オーディエンスの関心を散漫にさせないことがあったが、その甲斐あって発表者とオーディエンスが一丸となった、心地よい緊張感溢れる口頭発表にすることができた。最後に御指導いただいた方々、会場に足を運んでいただいた方々に心から感謝の意を述べたい。
卒業制作展を振り返って
輝く大舞台 第6回卒業制作展 事務局あいさつ
第6回卒業制作展事務局
加藤賢治[ text = KATO Kenji ]
第6回卒業制作展も、大きな事故もなく盛況のうちに無事終了することができました。これもひとえに出展者はもちろんのこと、関係各位のご尽力の賜物と感謝しております。
さて、例年、卒業制作展は5月からスタートします。前回の反省会にはじまり、会場の選定、学生実行委員の選出、実行委員会の立上げ、会場見学会、出展会場の決定と進んでいきます。事務局としては、今までの蓄積をもとに会議を進めていきますが、毎年大きく違っているのが当然のことながら主役の4年生たちです。昨年と同じ会場でも、出展者によってその年の個性が色濃く出てきます。毎回が初年度のように新鮮に感じられるのが、本学卒業制作展の特色の1つと言えるのかもしれません。200名を越える学生たちの4年間の成果を発表する大舞台は、例年まぶしく輝いています。この舞台裏を支えることは決して容易ではなく、各方面にご迷惑をおかけする場面も幾度とあり、その都度深く反省しておりますが、観覧者や学生たちの笑顔に励まされ、誇りに思って努めさせていただいております。今後ともよりいっそうのご支援ご協力を賜りますようお願い申しあげます。
末筆になりましたが、卒展実行委員の学生諸君、各展示会場のご担当の皆様、ご協力いただきました関係各位にこの紙面をお借りいたしまして厚く御礼申しあげます。
展覧会報告 exhibition report
造形美術科進級制作展
人間学講座専任講師
島先京一[ text = SHIMASAKI Kyoichi ]
今年の造形美術科3年生による進級制作展は、例年通り滋賀県立近代美術館ギャラリーで開催された。今年度の新しい試みとして、会期を2週間設定したことが注目される。会期の1週目は日本画、洋画の2クラスの学生諸君の意欲作が、2週目にはファイバー・アート、立体造形の2クラスの学生諸君の力作が展示され、芸術計画クラスの興味深い展示は2週連続して行われた。会期が長く設定されたことで、当然ながら作品の展示条件は向上し、作者にとっても観照者にとっても、よい機会になったといえよう。前半は平面造形作品、後半は立体造形作品が展示の中心を占めることになったが、両者を同時に展示しながら1週間で作品を入れ替え、2週間の期間を活かすという方法もあったように思われる。特に第1週にみられた、洋画クラスの何名かによるインスタレーション作品や立体的な作品と、展示の大半を占めた平面造形作品群との関係を考えたとき、平面作品と立体作品の共存によるダイナミックな空間を実現させることによって、個々の作品を活かすこともあり得たように考えられるのである。
多くの学生諸君にとって、自らの作品を社会的に公にすること、即ち多くの未知の人びとに作品をみてもらうことは、恐らく今回が初めての機会であったと思われる。特に滋賀県立近代美術館ギャラリーは、美術館の企画展を目当てに訪れた一般の美術愛好家が、企画展を楽しんだ後に観照に来てくれる可能性の高いスペースであり、その意味からも貴重な経験であったに違いない。
公的な空間に自らの作品を展示し世の人びとに問うということに関して、一観照者の立場から感じたことを一つ記したい。それは作品のタイトルの問題である。少なからぬ観照者が、作品キャプションに記された作品タイトルを、作品を楽しみ、作者の思いを考えるためのきっかけとしているという事実がある。作品を制作し発表するということは、作品を通して自らの思いを他者に伝えるということであり、タイトルとはそのコミュニケーションの入り口の一つになり得る。タイトルとは単なる名称ではなく、作品の一部であるといってもよいであろう。しかし今回の進級制作展の何点かの作品タイトルには、正直なところ、首を傾けざるを得なかった。それはただ単に、作者の感性のチャンネルと私のそれが合わなかった、即ち私の感度が鈍かっただけかもしれないが、出品者には、自らつけたタイトルが独りよがりの自己満足に陥っていないか、熟考することを期待したい。特に「無題」というタイトルを選択した作者は、このタイトルには、観照者に対して、作品を享受するきっかけの一つをあえて呈示しない、云いかえるならば、観照者を突き放した上で作品世界に引き込まなければならないという、厳しさ、困難さを伴なっていることに、思いを馳せてほしい。
いくつかの作品に対しては、技術的な未成熟を感じたが、しかしそれぞれに作者のみずみずしい感性が窺われ、今後の可能性を感じさせてくれた。また既に自らの語り口のようなものを発見し、作者は早くもその醸成の段階にあると思われるような作品も、少なからず見られた。何れにしても、来年度の学習の総仕上げとしての卒業制作展に、期待をもたせる展示であった。
滋賀県立近代美術館ギャラリーでの展示風景
タイムテーブル time table
3月
1日(金) ● 第2回京滋地区芸術系大学合同就職説明会
場所:キャンパスプラザ京都(JR京都駅前)
対象:現3年生
6日(水) ● 一般入試(後期) デザイン科・造形美術科
25日(月) ● 新4年次生ガイダンス
26日(火) ● 新3年次生ガイダンス
27日(水) ● 新2年次生ガイダンス
4月
1日(月) ● 新1年次生ガイダンス
低学年向キャリアデザインセミナー
講師:本田勝裕氏(元「an」編集部)
18日(木) ● 第1回就職ガイダンス
キャリアデザインセミナー
講師:本田勝裕氏(元「an」編集部)
編集後記
「卒業生の皆さんおめでとうございます。4年間の大学生活は、今後きっとかけがえの無い、青春の日々となることでしょう。大学を離れても、いつでも成安にアクセスしてください。皆さんからの情報を、お待ちしています。」(辻)