公開講座「文化財をリスペクトする気持ちとは!」開催されました。
11月25日(土)10時30分より、大津市歴史博物館にて小沢剛(おざわつよし)客員教授(美術領域)と木下史青(きのしたしせい)氏による対談形式での講演会が開催されました。 「文化財をリスペクトする気持ちとは?」と題され、現代美術家である小沢教授の作家の立場からと、東京国立博物館企画デザイン室長である木下氏の展示する立場からそれぞれの視点で文化財の見方や考え方について語っていただきました。 この企画は隣接する三井寺にて小沢教授が担当する美術領域を中心とした学生の取組み、「秋は、三井寺、アート来迎。」と題した展覧会「ホワイトアウト大藝術祭」の特別企画として企画されました。
まず始めに小沢教授のこれまでの作品紹介から始りました。 小沢教授は近代美術以前の見世物的表現の展開より浅草寺での油絵茶屋プロジェクト、日本独自の素材でもある醤油を絵画に用い、近代絵画を醤油で描いた醤油画美術館などを紹介されました。 日本人の生活や民俗、文化に着目し現代の表現にとして作品制作されています。その中でも近作の「ホワイトアウトシリーズ」は空間の見え方をかえたり、対象の存在を際立てせる作品で、その紹介が詳しく語られました。
小沢教授は今回の三井寺のプロジェクトにおいても重要文化財の一切経蔵(いっさいきょうぞう)や釈迦堂をホワイトアウトする表現を試みられ、作家自身が文化財の背景や歴史を認識し、対峙しながら制作。その姿勢や既存のホワイトキューブ(白い箱の空間)に留まらない場所の独自性を活かした表現を行うことは今後の新しいあり方であると解説されました。
一方展覧会をつくる側の木下氏より、日本で始めての東京国立博物館企画デザイン室の仕事についてお話いただきました。
1998年に平成館という新しい展示室が出来て依頼、博物館展示の考え方が変わったことを皮切りに、博物館職員の考え方も見直されたことからお話が始りました。展示のみならず、保存修理や生涯教育など国民の財産である文化財等を見てもらうためのあらゆる考え方の変革をおこなったことなど話されました。 最近の記憶にのこる有名な展示に「国宝 阿修羅展」や伊藤若冲の作品で有名な「プライスコレクション」の空間及び照明デザインプロデュースなど図版をたくさん織り交ぜながら、活動紹介をしていただきました。
次に小沢教授と木下氏の東京藝術大学時代、同級生でありながら小沢教授は絵画科、木下氏はデザイン科でのお互いの活動の見え方から、これまでの活動における同時代の変遷、ながれ、気風などの興味深い内容の対話が展開されました。この対談を聞いて、この数年で美術や文化財の存在価値、見え方が大きく変化したことを感じとることが出来ました。
最後に木下氏より印象的な話をされました。展示に力をいれることで空間や作品を際立たせ、鑑賞者がリスペクト(尊敬の念)する気持ちが高まることが結果として関心が博物館に向けられる。それが我々の仕事であると・・・。 また展示デザイナーとしての自分の名前をアピールするものではないと話され、その瞬間、美術作家とのちがいを垣間見ました。
対談終了後、午後1時から行われる三井寺一切経蔵(国重要文化財)での「輪蔵まわし」というイベントの紹介があり、講演参加者、関係者は 見学に向かいました。