【SEIANドリームプロジェクト】令和3年度採択者紹介『歴史ある大津絵を 現代ならではの表現で』
今年度で2年目となるSEIANドリームプロジェクト。
昨年度の採択者である卒業生(当時情報デザイン領域4年生)の川上容奈さんが取り組んだ研究についてご紹介します。
●歴史ある大津絵を 現代ならではの表現で
川上容奈さんは、歴史ある「大津絵」とデジタルが融合した、新しい形の絵画作品の楽しみ方の研究を行いました。
卒業制作展では、大津絵を代表する「藤娘」を題材に、2種類の異なる表現の平面作品を展示。
一つは、掛軸に仕立てられた伝統的な画法で描かれた作品で、もう一つは高さ1mほどの大きな近江和紙のキャンバスに繊細なデジタル表現で細部まで描き込んだ、全く新しい藤娘です。
新しい藤娘には、身に着ける笠や着物や帯に大津絵のモチーフになっている鬼や男たちが描かれており、それらにInstagramのカメラをかざすとなんとARフィルターで解説が画面上に現れます。
全10種類のキャラクターが潜んでおり、それぞれのモチーフになっている大津絵の伝統的な物語や教訓の解説を、スマホを通じて知ることができるのです。
《藤娘 -大津絵十種-》
「大津の特産品として、古くから人々に親しまれてきた大津絵。味のある画風や風刺の効いた画題に魅せ、触れながら、現代の画法や技術を用いて表現しました。本作をきっかけに、大津絵ならではの魅力を感じていただけますと幸いです。」
*『SELECTION 卒業制作展 2022』内成果発表展の展示風景(撮影|守屋友樹)
●様々な人の協力を経て、一人では行けなかったところへ辿り着いた
高校までは日本画の先生に師事していた川上さんは、大学入学後2年間イラスト領域に在籍し、デジタル作画技術を学び、日本画の表現を活かした作品づくりを行ってきました。
大きな転機となったのは、地域連携推進センター(ちれん)が印刷会社と実施していた年賀状のイラストコンペに応募し、見事に入選し、実際に年賀状の印刷販売につながったこと。
「ちれんでの経験が、自分自身の作品制作や進路選択のターニングポイントになったと感じています」
卒業制作前に応募したSEIANドリームプロジェクトを通じて、「様々な人にお世話になり、自分の希望を一人ではできないところまで探究することができた」と話す川上さん。採択後に審査員をしていた教員の紹介で、大津絵の絵師や大津市歴史博物館の学芸員へ取材し、大津絵の理解を深めていきました。
そして、伝統的な藤娘の描き方を研究し、日本画絵具で近江和紙に描き、額装も滋賀の表具店で仕上げた、こだわり抜いた作品が完成しました。
「ドリームプロジェクトに申請するのは、少し勇気がいること。でも、大学に相談できたことで金銭面の支援だけでなく、研究や制作に関しても相談ができてとてもお世話になった。プレッシャーもあったが、自分ひとりだけじゃないという思いで制作することができた」と自身の研究活動、制作を振り返りました。
●作品サイト|https://haku9lion.wixsite.com/my-site *スマートフォンでの閲覧推奨
プロフィール
川上容奈
かわかみ・ひろな/香川県生まれ。2022年成安造形大学卒業。
2年生までイラストレーション領域に、3年生からは情報デザイン領域に所属し、絵画制作からグラフィックデザイン、ウェブデザイン、写真撮影など幅広い分野の制作に取り組む。