CDFNYサマープログラム2013 参加報告レポート
成安造形大学と協力関係にあるアメリカ・ニューヨークのスクール・オブ・ヴィジュアルアーツ(以下、SVA)が主催するCulture, Graphic Design and Fine Arts in New York Summer Program(以下、CDFNYサマープログラム)に、本学学生2名が参加しました。本プログラムの全課程を修了すればSVAより3単位が与えられ、本学ではそれを単位として認定しています。
今回が本学からの初参加で、次年度もSVAがプログラム開講を発表すれば、募集を行ないたいと思いますので、このレポートを見て興味をもった学生はぜひぜひ2014年度のサマープログラムに参加してください。
【概要】
本プログラムは文化とデザインとアートについて学ぶプログラムで、2013年7月8日~26日に実施されました。この3週間の夏のプログラムは、SVAが海外の大学生を対象に、ニューヨークの街に実際に住んで、アメリカの文化に触れ、様々なスタジオ実習を通じて、それぞれの創造する力を研鑽・開発するためのプログラムです。また、課外で夜間や週末に美術鑑賞や観劇などをする文化活動も含んでいます。学生は、終日実技コースまたは、実技&語学コースを選択することになります。本年度学生は2人とも実技&語学コースを選択しました。
【出発~到着】
プログラム開始期間は、本学の前期授業の途中であったため、プログラム参加のための特別な配慮を各授業の先生に認めてもらう必要があります。本学では原則、本学の授業を放棄してプログラムへ参加することは認めていませんので、2人の学生はそれぞれにプログラム参加のため、別途課題や保留など、それぞれに数週間分の穴を埋める対応を終えてからの出発となりました。
伊丹空港から成田空港まで国内線で1時間20分、成田空港からJFK空港まで13時間5分の長旅です。ニューヨークは時差が13時間あるため、成田空港から7月7日の午前11時10分に出発した飛行機は、JFK空港に7月7日の午前11時15分に到着しました。
出入国に関しては、荷物の重量オーバーや手続き書類の不足などで手間取る場面もありました。
到着後、大学寮へのチェックインのため、JFK空港からマンハッタン島へ。SVAは、ニューヨークの中でも最も賑やかなマンハッタンにあります。
SVAは大学の敷地として一定の範囲を持つわけではなく、マンハッタンにいくつかのビル、あるいはビルのフロアを持ち、学生はそこで授業を受けるスタイルとなっています。寮もマンハッタンの街に建ち、左右にも大学の建物が建っています。寮のそれぞれの部屋は、数名でルームシェアをするようになっており、キッチンとダイニングとバスルーム(洗面台&バス&トイレ)が共用、各部屋は二名部屋で、二段ベッドと机、収納などがあり、部屋ごとに施錠が可能です。洗濯は地下のコインランドリーが利用可能です。寮と言っても23階の高さを誇るビルで、各部屋からの眺めもなかなかのものです。この日は午後4時から寮の利用説明などを受けました。
【サマープログラム・オリエンテーション】
8日9時30分より、SVAシアターにてプログラム全体のオリエンテーションがありました。プログラム参加学生全員が集まってのオリエンテーションで、見渡したところ韓国の学生が多い印象でした。軽食を食べながらの会で、ウェルカムムービーが流れたあと、留学生企画課のディレクターであるAndrew Chang氏によるイントロダクション、入試・学生課のエグゼクティブディレクターであるJavier Vega氏によるSVA歓迎の挨拶、留学生課のディレクターであるKaori Uchisaka氏による留学生登録に関しての説明、留学生企画課のコーディネーターであるSarah Richardson氏によるプログラムインフォメーションが実施されました。
【第1週目の授業開始】
オリエンテーションのあと、午前の残り時間で語学の授業が始まりました。本学学生2人が所属するグループBは、午前中に語学、午後にスタジオ実習をするクラスです。
語学は週2回が実践即興英語、週3回がアートに関する英語で、3週とおして実施されます。午後のスタジオ実習については、第1週目は5日間、ヌードクロッキーです。ヌードクロッキーは本学でも取り組んでいる2人ですが、モデルが日本人でないのは2人とも今回が初めてで、等身も体型も違うため、かなり新鮮な体験だったようです。
【課外活動と休日について】
平日夜のナイト・アクティビティが2回(ミュージカル鑑賞と映画鑑賞)、1週目土曜と2週目土曜に実施のウィークエンド・アクティビティが2回(芸術鑑賞と観光のセットを2回)、計4回の課外活動が実施されました。もちろん、課外なので参加は自由です。また、日曜日は完全にフリータイムなので学生自身で予定を組んで観光やギャラリー巡りなどをすることが可能です。また、平日の授業も4時までなので、それ以降の時間も自由に使えます。8時くらいまでは昼間のように明るいため、限られた時間を有効に使って、様々な場所を巡りました。
課外活動(2013年度)
● ブロードウェイ・ミュージカル
「オペラ座の怪人」か「マンマ・ミーア!」を選択
● 映画鑑賞(ムービーナイト)
● 芸術鑑賞 & 観光 (2つ選択可)
・MoMA & チェルシー散策
・メトロポリタン美術館 & セントラル・パーク散策
・クロイスターズ美術館 & フォート・トライロン・パーク散策
【7/13 第1回ウィークエンド・アクティビティ】
二人の学生はそれぞれ別のアクティビティを選択しました。ひとりは「MoMA & チェルシー散策」、もうひとりは「メトロポリタン美術館 & セントラル・パーク散策」です。1週目の週末にはすでにルームメイトと仲良くなっていて、アクティビティもルームメイトと楽しく行動しました。
「MoMA & チェルシー散策」
MoMAはニューヨーク近代美術館(The Museum of Modern Art)の略称で、モダンアートの名作傑作が、ガラスも立ち入り禁止ラインも無く、間近で観覧できます。
展示作品一例:ワイエス『クリスティーナの世界』、モネ『睡蓮』、セザンヌ『水浴する人』、リキテンスタイン『ボールを持つ少女』、ウォーホル『キャンベル・スープ缶』、ポロック『ワン:ナンバー31』など
チェルシーは、マンハッタンの南西部に位置する地区で、ギャラリーが集まる最新アートの発信地でもあります。チェルシーマーケットは、東西に長く伸びる通路の両側にずらりとお店が並ぶマーケットで、食事や買い物を楽しむことができます。
「メトロポリタン美術館 & セントラル・パーク散策」
メトロポリタン美術館はあまりにも巨大な美術館で、とても一日で回りきることができないほど大きく、様々な時代、様々な地域、様々な分野の作品が並んでいます。
展示作品一例:マネ『舟遊び』、ゴッホ『麦わら帽子の自画像』、ゴーギャン『イア・オラナ・マリア』、ラ・トゥール『マグダラのマリア』、シャガール『恋人たち』、フェルメール『水差しを持つ若い女』、名和晃平『PixCell-Deer#17』など
セントラル・パークはマンハッタンにある都市公園で、南北4km、東西0.8kmの広さがあり、大都会で働き暮らすマンハッタンの人々のオアシス的な存在となっています。
【第2週目の授業】
2週目、午前中は先週に引き続いて語学の授業です。2人とも少しずつですが手応えを感じている様子です。当たり前ですが、こちらの日常生活では、英語を使えないと買い物すらもできないことが、英語の学習により効果をもたらしているのかもしれません。
2週目の実習は、ブレインストーミングと呼ばれる新たなアイディアを生み出すための方法の学習です。雲の写真を見て、何に見えるかを思いつく限り描きだしてみるなど、着想の根幹部分の学習で、自分の発想力の引き出し方を学ぶことは、今後の制作にも大きく役立つことでしょう。
【7/15 映画鑑賞】
ムービーナイトと題した、映画鑑賞会です。今回は『パシフィック・リム』という3DのSF怪獣映画を鑑賞しました。日本では8月9日(金)公開でしたので、一足先に見ることができ、少し得をしたような気分です。
【7/18 教職員展オープニングレセプション】
18日、プログラムとは直接関係ありませんが、SVAの教職員による展覧会が学内ギャラリーにて開催されるのにあわせ、オープニングレセプションが実施されておりました。大変な熱気と賑わいでした。また、作品も日本で見る作品とは全体的に雰囲気が違うという印象を受けました。
【7/18 ミュージカル鑑賞】
いわゆるブロードウェイ・ミュージカルと呼ばれる王道ミュージカルの鑑賞会です。シアターそのものも装飾的に美しく、また「マンマ・ミーア!」はABBAの名曲で構成されたロングランミュージカルで、賑やかなカーテンコールは観客まで踊り出す、大変楽しい鑑賞会となりました。
【7/20 ウィークエンド・アクティビティ】
今回のウィークエンド・アクティビティも、2人は別々に行動しました。ひとりは「MoMA & チェルシー散策」、もうひとりは「クロイスターズ美術館 & フォート・トライロン・パーク散策」です。
「クロイスターズ美術館 & フォート・タイロン・パーク散策」
クロイスターズ美術館はメトロポリタン美術館の分館で、マンハッタンの北端にあります。展示物の鑑賞はもちろんですが、ロマネスク様式の回廊や、ゴシック様式の建築彫刻など、建物自体も非常に見応えがあります。
展示作品一例:ロベルト・カンピン『メロードの祭壇画』など
フォート・トライオン・パークは、ニュージャージーとハドソン川を展望出来る公園。色とりどりの花が咲き乱れ、蝶やリスが遊ぶ、とても雰囲気の良い公園です。クロイスターズ美術館はこの公園の中にあります。
【第3週目の授業】
第3週目、いよいよ最終週です。語学の授業も3週目に入り、ますます熱が入ります。開始当初よりも、英語の聞き取り能力はアップしたという実感も出てきました。ルームメイトと話すのも、より一層聞き取りやすく、またこちらから話す言葉も浮かびやすくなってきています。3週目の実技はやや詰め込み過ぎかと感じるくらい非常にバラエティ豊かで、月曜日は彫刻演習、火曜日はハイラインで野外実習、水曜日は版画の授業でモノプリントのブックカバー作成、木曜日はニュージャージーのMana Fine Arts Centerの見学を行ないました。金曜日には最後の総集編として、このプログラムにおいて制作した作品の選抜作品展を実施しました(詳細は後述)。野外実習を行なったハイラインは、高架貨物線跡を空中緑道として再利用した場所で、多くの人で賑わっていました。
【CDFNY Summer Program Exhibition】
第3周目の金曜日、このプログラムに参加した学生の作品展が、SVAの主要ビルのうちの一つで実施されました。作品を一堂にならべると、それぞれに個性があり、また、日本ではあまり見かけないようなアプローチも見られ、非常に見応えがあり、素晴らしい締めくくりとなりました。
会場は多くの人で賑わっていました。
【フェアウェル・ディナー】
展覧会の終了後、別の建物に移動して、フェアウェル・ディナーと修了証の授与式が行われました。終始、和やかな雰囲気で、みんな笑顔でプログラムのフィナーレを迎えることが出来ました。